以前にも書いたが、「低音不足」などという言葉は非常に曖昧な言葉だ。
大事だと思うのはやはり「試聴位置の特性をとってみる」ということだろう。
フラットであれば好みはあるにしても、それほど不足は感じないと思うがフラットでどこまで伸びているかが問題だ。
この場合は「不足」ではなく「伸びてない」ということになる。
ただそういう表現はあまり使われない。多分測定しないからだと思う。
実際、この2つはかなり異なる。
バスブーストだと、
・不足=バスブースト量
・伸びない=バスブースト周波数
でこれを一緒にして補正しようとすると悪化させる原因にもある。
特にトーンコントロール回路というのは周波数をずらすわけではないので、伸びているものが前提になる。なのでバランス悪化することもある。
一方、測定してやるのであれば、バスブーストも悪くないし長岡先生の作品にもそういうのはある。
そもそも3wayのネットワークも周波数配分と能率をLCRで制御しているのでバスブーストを否定することはない。
スピーカのネットワークは減衰方向のみだし、過大入力にも対応しているだろうから歪みっぽくなりにくいと思うが、バスブーストもダイナミックレンジを考慮して歪まない程度になけるのであれば効果的だと思う。
耳であわせられたらそれはそれでいいが、一般的には、測定ありきということになると思うし、そのほうが確実だ。
PCが発達したので測定そのものはそう難しくはないが、それでも校正などを考えると面倒には違いない。ただ自分が「どういうものを聞いているのか?」「どう補正したらいいか?」を知ることは悪くないと思う。
小口径で低音が不足だという場合
1.100Hzまでフラットでない場合
それ以上で下がり始めると低音不足。これはスピーカを変えたほうがいい。
2.100Hzから急激に落ちる場合
急激に落ちるというのは例えばバスレフなど。別に方式が問題ではない。バスレフは低い領域で共鳴音(ダクト共鳴)を出すが、それが切れる部分はスピーカの音もない。
同じようなユニットで密閉にすると共鳴音もないのでもっと低音が出ない。
グラフにすると密閉はもっと上の周波数からダラ下がりするが、バスレフは下まで伸びて急激に低下するような形になる。
が多い。
もし急激に落ちなくてダラ下がりすると、量感はあるので「不足」と思わない場合もあるし、それでいいという人も多い。
ただ仮に100Hzまでフラットで後はダラ下がりにしても質感というのがある。これは100Hzでは出ない。もっと下に伸ばせば伸ばすほど出てくる。
この場合「低音が不足」という表現ではなく「低音が伸びていない」という表現が適切だろう。
では「低音はどこまで伸ばせばいいのか?」になる。
一般的に人間は20Hzが聞こえるといわれているので、20Hzまでフラットなら言うことはないが、それは現実的にはかなり難しいし投資も必要になる。
ではどこまで?になるが、個人的には40Hzまで出ればBestに思う。
というのも単独で低音を聞くと20Hzというのは聞こえるかもしれないが現実的にあるのだろうかと。
WGで20Hzを入れるとスピーカが振動しているのが見えて聞き続けると地震の予兆というかそういう感じで気分が悪くなる。つまり連続して聞くような性質のものではなく、「ドン」とか「ドシン」とか単発で聞くものなのだと思う。
まあ出れば出たに越したことはないが、投資に見合うような現実性があるとはいえない気がする。自然音にはあるかもしれないが、音楽には少ないような。あっても和太鼓とかパイプオルガンとかの一部ではないかと思う。
31.5Hzは微妙だが、40Hzあたりは入っている音楽はあると思われる。それでも「聞こえる」というのと「フラット」というのは意味あいが違う。ダラ下がりしても聞こえることは聞こえる。単発なので我慢のうち。
つまり40-50Hzまで伸びていてフラットであれば質感も十分ということに思う。フラットであればそれ以下でも聞こえることは聞こえる。(それ以下が無意味とは思わないが、容積や価格を考えると投資効率は悪くなるので下がっていてもOKというか。)
今まで小口径で40Hzの再生ってのはあきらめてもいたがTabo-xでちょっと様相が変わった。
フルレンジ1発でそうする場合、高価なユニットが必要かといえばそうでもない。
Tabo-xの場合例えば松下のT10P45A6の特性である。
これはなんと1個¥600!!
100Hzからダラ下がりしている。
これは10cmの密閉なので、一般的に同一口径以上なら、これかこれ以上の特性は出るだろう。
この段階でも低音が不足でないと思うかもしれないが質感としては軽い音になる。
ハイ上がりにはなってないので、中高音がうるさいというほどではない。
これが低音が伸びていない状態。
密閉でもこうなので、共鳴構造では低音を伸ばす(低音の音圧を上げる)ことができる。
で、目下最優秀な(最も伸びている)Tabo-xに入れると...
40Hz-100Hzの不足分はすべて共鳴で出ていることになる。つまり「低音が伸びて補っている」。
バスブーストはしてないし、アンプも同じ。
中高音との音圧のバランスもとれている。
一般的にこの段階で低音不足はまず感じないと思う。
もしこれでも不足を感じるのであれば
・低音が多いものが好き
ということで別段スピーカのせいではない。
バスブーストすれば素直に低音があがる。(やり過ぎると歪みっぽくなる。)
ただ、測定しないでバスブーストするのは危険もある。
・スピーカから低音が出ていない場合にはバスブーストしても効果がない
かえって出ている音にピークを作る可能性がある
・バスブーストも程度問題でやり過ぎると歪みっぽくなる
ダイナミックレンジがなくどこかで線形が損なわれることがある。
なのでエンクロージャの共鳴でフラットにもっていくのは悪くない。
そのもそも「バスブーストで伸ばす」場合は周波数も重要なので測定しないでやると悪化しかねない。
共鳴という観点でエンクロージャ方式を見ると...
今までJSP・バックロードホーン・共鳴管を試してみたが、共鳴管のTabo-xは優秀だと思う。
ただ、どれもが同じ条件ではないのとそれぞれ音色が違うので「これがいい」と断言はできない。共通していえるのは、どれにしても容積は小さくはない。
ニアフィールドならそれなりの考え方もあるが、そうでなくて低音を伸ばしたいのであればある程度の容積は必要だろう。
個人的には、共鳴管やJPSの音は悪くないと思った。バックロードホーンは「元気がいい」音でちょっとしっとりした曲には合わないような印象。ユニットにもよるので一概にはいえないと思う。ただ、バックロードホーンは音圧があがるのでエコとは言える。
どれを選ぶかは好みの範疇ではあるが、Tabo-xは自作で試す価値のあるエンクロージャに思う。