空を見上げて
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小口径スピーカで低音は出るか?

フルレンジの8cmのものは低音が出るのだろうか?
最終的には「出にくい」というのが一般的な結論になる。

はfostexのFF85WKの特性である。(Boxに入れた場合)
スピーカにはfoという「最低共振周波数」がある。
ここが単品で低音が出る限界と思えばよい。これは色々な要因で決まるが、大雑把には「コーンの重さ」みたいに考えるとわかりやすい。
8cmだと、一般的には100Hz近辺になってこのスピーカは115Hzである。
(水色のインピーダンスにピークがある部分がfo)

では8cmだと20Hzは出ないか?といえば-30dbぐらいで出ている。
当然だが1Hzの電圧をかけるとスピーカは1Hzで振動するが、これだと例えば200Hzの1/1000になると考えればよい。
ではブースタで1000倍するとフラットになるかもしれないが1Vで駆動していたものが1000Vになって非現実的である。
まあ20Hzというのは極端なので50Hzほどを狙えばいいような気がする。これだと30倍ほどで済むがそれでも微妙。
またストロークを考えると、例えば16cmの1mmのストロークと等価の音圧を得るには8cmだと(面積なので)4mmのストロークになり、現実性に乏しい。

それ以外にエンクロージャで共振を利用する方法がある。共振は特定周波数が共振増幅される。バスレフ型が代表的だが、他にもバックロードホンなどいろいろ工夫されている。
この低音は「共振音」なので制動がゆるくキレはそんなに良くないが量感は得られる。共振音は制御が難しい反面独特の味わいがある。
個人的には制動が強い低音よりは聞いていて疲れないためよいように思う。
このエンクロージャでは50Hzの部分にディップがあるがそこがバスレフ共振部分でうまくつながっている。
しかし例えば16cmだとこうなる。

バスレフでは、ここまでの低音は出ない。

つまり小口径で低音を得るには...
・foの低いものを選ぶ
 これをやるとコーンがメタルなどの重い材質になり能率が悪化する。そのためパワフルなアンプで駆動することになる。
 一般的に巨大マグネットで駆動するため制動がきつく歯切れの良い音がする。
 コンポで小型のスピーカのものはこのタイプが多い。

・バスブーストする
 これはアンプで「味付け」してしまうので好ましくはない。但し安上がりで効果も大きい。
 特にフルレンジ1発は継ぎ目がないので、6db/oct程度のゆるいスピーカと逆の補正をかけるとそう不自然には感じない。
 但しアンプの能力で限度があるのと1度はスピーカの特性を測定しておいたほうがよい。(これはマイクとPCで測定できる。)
 一般的にはスピーカとアンプが切れなくなるのと、補正の部品で音は劣化するため嫌われるケースがあるが、知っていてそれなりにやれば効果的に思う。
参考1)PST方式
 これはスピーカ自作の大御所長岡先生の方式。スピーカに補正フィルタを入れる。
恐らく上と同じくフルレンジだとこれをやっても劣化は極小になる。
 スピーカの独立性は高くなる反面、大きなエネルギーを制御するし部品も高額になる。ネットワークと同じ部品でよい。
参考2)アコースティックエアー サスペンション
 吸音材を盛大に入れ、やはりネットワークで中・高音をCutする。つまり、中高音のところをカットするので全体的には能率が下がるため低音との効率差が少なくなる。

・エンクロージャを工夫する
 つまりは共振周波数でかせぐ。これは方式がいろいろ考えられているが、面白いと思ったのはJSPの方式。
 これはバスレフの共振周波数より下に同程度以上の音圧で共振帯域ができる。
 バスレフなどでは、ダクトの共振周波数は計算で求まる。細く・長くすると共振周波数は下がるが同時に量感も下がるので適当なところがある。計算してみるが最後は聞いてあわせる場合が多い。自作のメリットかも。
 JSPでも計算式があるが、バスレフより下を狙っても量感が得られる。また、バックロードホンほど構造は複雑ではないので工作は簡単にできる。
 共振周波数はあまり欲張らないほうが成功する。
 ただ、エンクロージャは小さくなるわけではなく、通常容積より大きくしないとこれが成立しない。(8cmでも10-13L必要。あまり大きくてもNG。)
 バックロードホンも同様で、決してエンクロージャが小さいわけではない。
 但し、これらは共振部分で「メーカにはない味わい」をもっている。

 結論からすると、最初に作るのなら8cmはやめた方がいいと思う。
 エンクロージャは8cmで工夫しても小さくはならない。(小さくすると効率を落とさないと低音が出ない。)
 無難なのは12cm-16cmでバスレフで作れば失敗は少ないように思う。
ただ、そうやると「当たり前」っぽい音になるので、他の手法を取り入れるのは面白いとも思う。

注)その後の考察
どこまで求めるか?であるが50-60Hz程度まではフラットに出てほしいものとする。できればフルレンジ1発。3wayなら別の考え方になる。
周波数特性を測定されて掲載されているものは、聴感で書いてあるよりは定量性があって齟齬が少ないと思う。
それで調べたものと自作の場合で
・8cmで調べると
 塩ビ管のダブルバスレフ+ホーン
http://jizounokimagure.at.webry.info/200706/article_1.html
あたりは凄い。なので設計でできるが難易度は相当高いと思う。
 次点として8cmのJSP方式やバックロードホンで10L近辺の小型のものは、バスブーストすればそれなり。バックロードホンは大型にすれば、良好になる気がするがJSPは大型にするとこれまた成立しなくなるので「適当な大きさ」が必須。バスブーストも前に書いたが限度があって低音だけを極端に出すとダイナミックレンジの関係で歪みが多くなってしまう。実用的なのはこのあたりではないかと思う。
 まずは、それなりのユニットを使う必要があるため安くはないし、思うほど小型ではない。
・10cmの場合
 8cmに比べてエンクロージャも大型にしなくてはいけないがユニットの選択範囲も多くて8cmよりは難易度は低い。QWTのabo-xや大型のTQWTのような共鳴管なら出る。ただ思うほど小さくはない。恐らく、JSPやバックロードホンでもそれなりの容積があれば出ると思われるが、小型エンクロージャではなく15-20L程度(かそれ以上)がどれも必要に感じる。ダブルバスレフは想像ではあるが、同じようなサイズで実現できるかもしれない。ただ設計パラメータが多いので難易度が高いと思う。
 JSPは構造が単純で製作しやすいが、容積やユニットに敏感な印象。バックロードホンは製作が面倒(楽しいともいえる。)共鳴管は、構造もシンプルだし失敗が少ないような気がする。(ややでかい。)
 鳴り方は構造によって結構違うのでどれがいいとは言い切れないがバックロードホンぐらいが無難な気もする。といいながら共鳴管が好きだったりするが...。

 自作するのならやはりちゃんとデータやユニットを公開しているのを参考にしてそれを改良したほうが良い。聴感は人によって表現が違って全然あてにならない。

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