ついでにタイムドメインの周波数特性を。
なぜかネットでそういう情報が驚くほど少ない。
叙情的な表現はよく見かけるけど...。
エクリプスのTD510を測定した。
実は、近所で工事か何かをやっていて低周波がうまくとれてない。
2重に見えるが、低音側が下の赤が正解。低音の測定中に採取して合成。
ほっておくとピークホールドするので高い点が確保される。
周波数はフラットではない。
低音が出る出ないの議論も見かけるが、基準があいまいだ。
フラットからみると「出てない」と言ってよい。
ただ300Hzからダラ下がりしているので量感があるといえばある。落ち方そのものも自然といえば自然に見える。ただ150Hz付近にディップがあるのが気になる。エンクロージャだろう。
聴感よりはわかりやすい。
試しにabo-xと重ねてみる。同じ10cm口径のもの。
これと比較しても、やはり低音はフラットには出ていない。というか同社の説明にもあるが、そういうものを求めたものではないようだ。
【以下はメーカの文章】
タイムドメイン理論とは、時間領域の再現性を高めることで原音により忠実な音を再生しようというオーディオ理論である。
原音再生という目標は従来のオーディオ理論と同様だが、従来は周波数特性の向上でそれを得ようとしていたのに対して、タイムドメイン理論では時間特性に着目。
その指標としてインパルス応答の向上を採用している。
そういう話にしても驚くほどデータ開示がない。
この話も、結局最後は音楽の聴感になっていて、それでは科学的でもなく基準がない。
インパルスで測定できるのなら具体的な測定方法と結果データを開示すべきように思うが...。他社がまずければ自社比較とか。
そうやってどんどん科学性がなくなるのだろう。
個人的にはインパルス応答というのも良く理解できない。インパルス応答で支配的なのはユニットではないかと思うからだ。エンクロージャだと背圧とかとかそういう話になりそうだ。
寄生振動やエンクロージャ振動影響が小さいのは素直に理解できるが、だから「インパルス応答が良い」となるのかがわからない。
制動をあげたいのなら、重たいメタルコーンでやったほうがいいように思う。力任せに駆動したら応答はあがりそうなものだ。
しかしタイムドメインに限らず普通のスピーカでも測定データは開示されてはいない。開示している工房サイトもあるが、非常に良心的だと思うし、測定して掲載している人もいて参考になる。
一般環境での再現が無理というのはあるとは思うが、参考でもいいから掲載してほしい。モデルルームでもいいわけで。
こういうあたりも「そこで勝負している」わけではないにしろ、どうかと思うことがある。
前にも書いたが、タイムドメインはスピーカの直接音が支配的になる。
そのためabo-xと比べると中音の暴れが小さいのは特性でわかる。
多くのダクト共振は中に定在波やエンクロージャの振動を含んで出てくるので暴れが大きく出てくる。
そのあたりからは好みだろう。
ただ一旦スピーカから出た音は部屋でやはり反射して多くの反射波が定在波をおこす。
そのためスピーカの直接音でも暴れは発生する。
なので反射物が多い部屋(インテリアが多いなど)であると効果も少ない可能性もある。
mini・Lightはニアフィールド向きなので余計スピーカ直接音が支配的になってよいような気がする。TD510はニアフィールドではないのでピンポイントでそうなる。Yosshii9は聴いたことがないが、間接音なのでこうではないと思う。
別にタイムドメイン理論に反対とかそういう立場ではないが「低音が出る・出ない」「クリア」が感覚だけで議論されているのが気になる。
測定してみると低音はそれで十分と思うかどうか別にして
・TD510はフラットな特性ではなく低音は落ちている
ダラダラ下がるので量感はあると思う。
・一般的な10cmの設計に比べても低音は小さい
一般設計に比べて緩やかではあるが200Hzから垂下する
・スピーカ音が支配的なので波形は綺麗
多分、ここが好まれる原因ではないかと思われる
というのは測定で客観的にわかる。
なので「低音はフラットな特性までは出ていない」というのが正しい。
後は自分の経験とか手持ちとの比較で「出る・出ない」になる。
またこのTD510やタイムドメインminiは背面ダクトがある。ダクトと言わないのかもしれないが開口部がある。
自分もやってみたが、そこに筒をつけるとダクトになってダクト共振する。
QWTにしてはスピーカの位置が上なので普通のバスレフとして動くのだろう。
でも多分思想的にはそういう共振音は(波形が荒れるので)嫌うのだろうからつけていないのだろう。
ただ壁から離してもある程度は出てくる。それもあって置き方でも変わる要素がある。背面ダクトは設置が難しい。
後は個々人の好みでいいと思う。
初めてこれを聴く人が購入を決心するには、「割り切り」もいると思う。
個人的には、やはりフラットでないものはBGMならともかく音楽鑑賞としては...と思ったりする。過大な低音を望んでいるわけではないが、この部分のリアリティが希薄になる。絵画でたとえると黒が薄いというか。それでも絵画がはっきりした方がいいのか、全体としてバランスしたほうがいいのかは好みだろう。両方得られるものではないということでここが議論百出する所以。
なのでエクリプスはタイムドメイン型のサブウーハも出している。
http://www.eclipse-td.com/products/316sw/index.html
一方では「特性はフラットでなくても良い」という話もでてくるので内部的にも方向性はいろいろあるのだろう。
実は、自分もサブウーハを足して聴いていた。(普通のYAMAHAのもの)
専用アンプというのが気になるが、バスブーストしているのだろうか?
ただTD510はスピーカとしても売られているので一般アンプにつないでいるし、純正のアンプも特にバスブーストしている風でもなかった。45Hz~(-10dB)となっているが、これもそもそも全体がフラットではないし、普通は-3dBなのでちょっとおかしな印象もある。(ちゃんとグラフを掲載しないと、45Hzというのは誇大表現に思う。普通に言えば200Hz~だ。)
補正は10dB程度なので、アンプで補正できないほどではないが、それなりに特性を見ながらやる必要がある。だから専用なのかもしれない。
タイムドメインminiを調べてみるとChipは三洋のLA4631や東芝のTA8207Kというのでそんなに高級なものでもないようだ。低音や高音に神経質な部品とも見えないし。
音の綺麗さはともかく(それは確かに良いと思う)音楽としてのバランスは曲というかコンテンツによって(他のスピーカより)悪く感じることもある。
上では「BGMならともかく」と書いたが、実は「BGMでも」フラットなものは好ましいと思う。音楽鑑賞では、ボーカルなど中音を中心に聞く場合が多いが、BGMなどでは「(音楽そのものではなく)音楽全体の雰囲気」を(無意識に)聴いているので個々の音ではなくバランスの方が大事。BGMはまるで聴き方が違っていて遠くの風景のようで、個々の花や木が重要ではなく全体の配置バランスが大事に思う。
BGMで犠牲にしていいのは定位ぐらいだと思う。全体で感じるので個々の定位はそれほど重要ではない。
BGMに関して言えばTD510は定位がピンポイントで無指向性ではないので向いていない。miniやLightなどのニアフィールドも同じと思われる。Yoshii9は多分その点はいいと思う。
思想的には良いものだと思うし、スピーカを浮かせる発想もすごい。珍しいスピーカに属するとも思うが、フラットな特性は出ていない。
綺麗な音でかつフラットであればこういう議論はないのだろう。要は両立してるわけではない。
現状での利害得失で議論するとただの泥沼になるが、とどのつまりは「綺麗な音でフラットな特性」が理想なわけで。サブウーハもいいがスタガード方式でもいいし、もう少し音バランスがとれた製品開発がほしいように思う。
原理上はエンクロージャ強度も小さくていいので安価にもできるし、自作派も多い。それに価格が価格なのでウーハーを足しても良いような気がする。
現状そのままとすると、これを一般スピーカと同列に語ることはできないが、これだと200Hz以下を多く含まないソースというかそれ以外を中心に聞く場合は確かにいいのだろう。例えばボーカル以外はそんなに気にしないとか。自然界に低音は...とかいうが自然音のCDだけならともかくピアノもパイプオルガンも楽器も音楽そのものが人間が作って加工したものだ。
購入者はそういう人中音志向の人が多いと思うが、間違えて(?)買った場合と評価が分かれるのはしょうがないような気がする。
タイムドメイン型のサブウーハを内蔵して好みでOnOffできればいいのに。存在しているわけだし。